俺の風俗体験記 ~白川PartⅠ~第六話

熱いシャワーが疲れた身体に心地よかった。
三十代後半にしては均整の取れた身体。
だと思っている。
孤独は己を磨く最高のスパイスになる。
だが、出来上がったディナーを誰かと食べる事は無い。
多少は鍛えてなきゃ今回の仕事は乗り切れない。
経験がそう告げていた。
短く刈った髪から首筋、肩へと湯を浴びせる。
後背筋の辺りは念入りにシャワーをあて続けた。
疲れが全て取れる事は無い。
経験がそう告げていた。
眼を瞑り、今日一日を振り返る。
―やれやれ。今回のヤマは骨が折れそうだ―
カランを捻りシャワー止めた。
ビッグサイズのバスタオルで身体を包み込む。
春を感じるほどの柔らかな感触。
お気に入りのショップ、IKEA。
確か二枚千円程度で購入したものだ。
激安だ。
バスルームを出たら直ぐにでもベッドに潜り込みたかった。
生憎だがこの部屋にはベッドが無い。
とてもじゃないが、築15年以上の畳の部屋にはベッドは不釣合いだ。
もちろんそれだけじゃ無い。俺にはまだやらなければならない事がある。
無造作に手に取ったボクサーブリーフを履く。
ウエストの部分にはCalvin Kleinとアルファベットで書かれている。
購入したのはもう一つのお気に入りのショップ。
コストコ。
二枚組、千五百円程度だ。
少し高い買い物だった。
しかし、大事なものは必ず守る。
俺もこいつも同じポリシーを持っているから仕方ない。
ソファーに腰を落とす。
サイドテーブルにはデスクトップパソコン。
これは余談だが、サイドテーブルもやはりIKEAで買ったものだ。
千円だ。
決して安くは無い買い物だが一流の男は一流を好む。
仕方があるまい。
俺はおもむろにパソコンを立ち上げた。
機械音とともにモニターに映る女の姿。
手で恥ずかしそうに胸を隠している。
童顔からは不釣合いな大きなバスト。
なだらかなウエストからヒップへのボディーライン。
コツコツと下積みを重ねて十年近く第一線で活躍している。
彼女は歌が上手いらしい。
今となっては手の届かない存在。
夢の女が頭をチラつく。
そもそも会った事も無い女の子事を考えるのは俺の主義じゃない。
暇を見つけて背景画像は今度変える事にした。
頭を振り払い、キーボードを叩いた。
【痴女りたい】
―3日の後、決着(ケリ)をつけるしかない―
暫くWEBサイトを眺める。
情報は多いに越した事は無い。
情報が無ければ依頼は達成出来ない。
鍵を握るのは人じゃない。
物じゃない。
時間でもない。
鍵はいつでも情報が握っている。
経験がそう告げていた。
必要な情報は携帯と手帳に留めた。
俺はそこまですると、カビ臭い布団へと潜り込んだ。
そしてしばしの眠りについた。

続く。