俺の風俗体験記 ~白川PartⅠ~第十九話

彼女は俺を弄んだ。
いや、俺と呼ぶべきか?
理性とは裏腹に蠢く俺自身のケモノ。
生用心棒。
略してNY。
NYを尻で、時にはしゃがみこんで胸で。
そして手で。
手は休まる事無く必ずどこかに触れる。
ミスタービーンズを。
背中を太ももを腕を。
ミスタービーンズを。
多くの場合はミスタービーンズを。
そして多くの場合は尻で、尻でNYを弄ぶ。
だが、永遠を感じる事は出来ない。
りょうは飽きたように、突然動きを止める。
吐息の漏れる声で俺に言った。
『こっち…』
りょうは俺の手を掴むとバスルームへと向かった。
バスルームには入らず、脱衣所辺りで立ち止まるりょう。
そして俺の後ろへと回り込む。
弄ぶ。
そしてまた弄ぶ。
知らなかった。
知らなかったんだ。
洗面所にあんな大きな鏡があるなんて。
いや、知っていたよ。
確かに知っていた。
だが、忘れてた。
忘れていたよ。
経験が教えてくれない時もある。
鏡は俺に屈辱を与える為だけの彼女の味方だ。
『どう、見えてるよ。恥ずかしいね?』
大きな鏡に映る小さな俺のNY。
まざまざと見せ付けられる。
惨い。
むごすぎるその光景に俺は思わず目を背ける。
何故かは分からない、願いが通じたのか?
すかさずりょうは俺との位置を変えた。
優しさ?彼女にもまだ残っていた人間の心。
今更そんな事はどうでも良かった。
いつの間にか置かれていた洗面台の薬品。
見覚えがある。
これは…ローション。
気づけば蛇口からお湯まで出ていたようだ。
湯気が立ち上っている。
恐らくはりょうの仕業だろう。
俺の目を盗んでこの程度の動作、彼女には目を瞑っても出来る造作もない事。
だが実際、目を瞑っていたのはほとんど私だった。
りょうは俺を洗面台に押し付ける。
この時の俺に抵抗する力は殆ど残っていなかった。
陶器で出来た無機質な洗面台の白い冷たさが俺を冷静にさせる。
俺はりょうと洗面台の間に囚われる。
囚人でもこの刑罰は御免こうむるだろう。
“プシュッ”
聞き覚えのある音が耳に入る。
―マヨネーズだ!そうだマヨネーズを出す時に空気が入っていてそれが出た時の音だ!―
経験が告げる。
どうやらりょうは、ローションと言う名の毒薬をとうとう俺に使うらしい。
俺は心の中で決意した。
すでに生用心棒はぬるぬるだ。
今さらどうと言う事はない。
受けて立つ。

続く。