KNHS ~春日部ニューハーフ物語~ 第4話

会社から自宅までは数分の距離。ちなみに実家も車で10分程度の距離。
俺ってばつくづく地元民で、このSDCTを愛している。
何にもない街なんて言って東京に出て行く奴らもいっぱいいたけど、それってここに何もないんじゃなくてお前が見つけられないだけだろって思ってる。
なぁ、あんただってそう思ってんだろ?
もっとも、俺が何かを見つけたのかって聞かれたら自信は無いけど誰かの何かを見つけた事はあるような気はする。
脇役だって見方を変えれば主役だろ?黒子は闇の中じゃ消えちまうけど、光の中じゃ一番目立つんだぜ。
俺は自分が主役の自分の城へと舞い戻る。
家賃は駐車場代込みの5万8千円で1Kの駅近くの物件。
フットワークの軽い俺には駅近くの物件がちょうどいい。
疲れた体に渇を入れて、玄関のドアを開ける。最後の力を振り絞って『ただいま!』なんて言ってみても、もちろん返事はない。
荷物をそこらへんにほっぽらかして、白河さんに貰ったIKEAのテーブルにでかい顔して座ってるマックの電源を入れた。
手馴れた操作でキーボードを叩く。
そして検索をかける。もちろん検索ワードは【真打ニューハーフクラブ】
ところで、パソコンってのは便利なもんでトントントンってな具合にキーボードに文字を打ち込めば知りたい情報が何でも手に入る。学生時代はわからない事だらけでも教科書すらまもとに開かなかった俺が、今じゃ何でもすぐに調べようって気になる。
この【真打ニューハーフクラブ】だって、一昔前なら怪しい書店のコーナーにしか置いてない本にしか情報なんて載ってなかっただろうけど、今じゃ・・・ほーら出てきなすった。
魅力的な言葉が画面に並んでる。
俺はマックのモニターを食い入るように見つめた。

―新たな世界へようこそ―
生まれ変わった誰かが、あなたを変わらせます。

たかが風俗と侮るなかれと言わんばかりに大仰な文句だ。
それにしても本当に女性にしか見えない元男性ばかり。
そんな中でも一際目を引くキャストが居た事を思い出した。
名前は【RIA】年齢は29歳、良く見るとアリアリ?
なんの事だと思って早速相棒のマックで検索。

《ニューハーフ ありあり》

マックの中に住み着いてるグーグル先生がご丁寧に教えてくれた。
ありありってのは棒も玉もまだ存命って事らしい。要は手術前だね。
でも【RIA】はどう見ても胸はDカップ以上ある。プロフィールを見てみるとEカップ。
写真を見ながら不思議な興奮を覚える自分がちょっぴり新しい世界の扉を開いたような気がした。