俺の風俗体験記 ~白川PartⅠ~第七話

その日の目覚めは良かった。
とっくに太陽はかくれんぼをしていたが、月が俺を見つけてくれたようだ。
枕元のデジタル時計に目を向けると19時を示している。
どうやらずいぶんと寝てしまったようだ。
考えていた予定が崩れた事はさほど気にはならなかった。
気掛かりは一つ。
―圧倒的に情報が不足している―
予定が気にならないとは言え、時間が戻る訳じゃない。
何が起こるか分からない。
ただ、確実に起こる事も分かっている。
そして、起こさなければならないモノも。
経験がそう告げていた。
俺はすぐさま布団から出てバスルームへ向かった。
自分で定めた時刻は迫っていたが、念入りに身体を洗う。
戦いの前とはいつもそういうものだ。
首、肩、腕、胸、腹、太もも。
背中、尻。
考えられる可能性を全て肯定し続けた。
そして一つを残し全てを洗った。
最後に念入りに、残された一つ。
陰部を洗う。
皮を剥いてからしっかりと洗った。
バスルームを出ると、バスタオルで身体を拭く。
今日は心地良さにくるまれている暇は無い。
事務的に頭から順に身体の水滴と汗を拭き取る。
ボクサーブリーフはやはりKalvin Kleinに限る。
セール品だ。
黒のVネックのロングTシャツは高級ブランドUNIQLOのヒートテック。
クローゼット。
とは言っても押入れに突っ張り棒を渡しただけだが、そこからチェックの赤いシャツを取りハンガーから外して着る。
靴下は黒をチョイスした。
三枚千円の安物じゃない。
五枚千円の激安物だ。
戦いに臨む服は以前から決めていた。
相手に舐められるとそこでGAME OVERだ。
それも二つの意味で。
黒いニットのジップアップも羽織り、さらにスタジアムジャンパーを重ねて着る。
財布と携帯、そして手帳をポケットにしまう。
スタジャンの内ポケット辺りを確認する。
準備しておいた相棒はしっかりとしまわれている。
昨日の夜に油を差して磨いておいた。
詰まりが起きればいざと言う時に取り出しても使えない。
滑りは良くしておかなければ。
高い金を払ってその筋から手に入れた。
日本でマグナムは合わない。
少し俺の手より余る程度のサイズがちょうどいい。
特別にしつらえさせた木製のグリップが俺の手には良く馴染む。
そこらの路地裏で外国人が捌いている安物とは違う。
こんな物騒なモノ、持ち歩く事に慣れている訳がない。
警察に職務質問を受けたらおしまいだ
俺の仕事を話せば理解を示す?そんな淡い期待はもちろん出来ない。
この国の警察がそこまで甘く無い事は痛いほどわかっているつもりだ。
さあ、準備は整った。
俺は急ぎ足で玄関へと向かった。
そこで気がついた。
俺とした事が、スタジャンの懐に気を取られ過ぎてズボンを履き忘れていた。
慌てて踵を返し、準備していたデニムパンツに両足を放り込んだ。
今度こそ。
―待ってろよ!【痴女りたい】―

続く。