受付はあざ笑うかのように言った。
『はい。ご指名料、入会金全て合わせて三万四千円になります』
とんだバッドラックと踊っちまった。
WEBページには書いていなかった。
と、思う。
思い起こしてみる。
―女性の画像に気を取られ、注意事項等をしっかりと読んでいなかったかも知れない―
誤算。
良くある事なのかも知れない。
経験がそう告げている。
ここで受付と揉めるつもりはない。
有利に駒を進めなくては。
修羅場はいくつも踏んできたつもりだ。
計画を変更するしかない。
俺は受付に言った。
『そうだ!やっぱり初めての店だし指名は無しで、お兄さんのお勧めでお任せするでゲス』
危険な橋を渡る事になるかも知れない。
経験がそう告げていた。
依頼を受けた時から覚悟は出来ていた
そこまでしないと社長に借りは返せない。
それほどに大きな借りだ。
そう、初めての風俗を奢ってもらうと言う事とは。
思えば10年程前だった。
おっと、思い出に浸れるほど余裕ある状況じゃない。
俺は今の状況を整理した。
―池袋はまだまだ俺に厳しい―
ただ、予想外の事はこれだけとは限らない。
俺は財布を出すよりも先に懐の用心棒を確めた。
―出来れば使いたくは…―
だが計画がここまで大きくずれた今、躊躇などしていられない。
いよいよ用心棒に活躍してもらう時が来たようだ。
やはり、経験が告げている。
そして俺の頭の中のサイレンはもうずっと鳴り続けている。
続く。