十九歳、夏。
扇風機の音と息遣いだけが聞こえる。
そこは以前働いていた職場の寮だった。
汗ばむ二人が居る。
俺ともう一人は女だ。
女は俺に卑猥な格好をさせて、俺のアナルへと指を突っ込んでいた。
『ねぇ、簡単に入ったよ。』
今でも鮮明に覚えている。
俺にはそうなるべく素質が備わって居たようだ。
『ねぇ、この乾電池入れてみてもいい?』
『わぁ、乾電池も入るよ』
『ねぇ、どんな感じ?気持ちいい?』
俯瞰で見る俺は恍惚の表情を浮かべている。
『もういいって、もういいって、何か出そう。うんこかも知れない』
俺は無駄な抵抗を試みている。
彼女には通じない。
『すごい勃起してるよ。気持ち良いんでしょう?』
俺は抵抗を続ける。
本当は続けてほしかったのか?俺には分からない。
『本当にうんこ漏らしそう。もう止めろ』
『大丈夫、何も出ないよ。』
彼女は本当に楽しそうな声をしていた。
フラッシュバック。
『もう止めよう。』
『私やっと好きな人が出来たの。』
『お願い別れて欲しい。』
『どきどきメモリアルに夢中だと本当に周りが見えないね』
『恋愛ゲーム一筋ね』
『何がコンプリートよ!』
『何がりょうちゃんを落とせば最後よ!』
『いつまでたっても落とせないじゃない!』
『そういう所が嫌いだった…』
『そもそも付き合ってないじゃない。』
『じゃあね。バイバイ。』
俺は一筋の汗と共に目を開けた。
現実が飛び込んでくる。
薄暗いホテルの一室。
今すぐブラックコーヒーを飲みたい気分だ。
ただブラックコーヒーなど本当は必要ない。
それよりも苦いリアルが俺の置かれた現状だからだ。
それに…。
そもそもミルクがないとコーヒーは飲めない。
経験がそう告げていた。
俺はもう一度ペンを取り、アンケートの続きを書き終えるとポケットに突っ込んだ。
携帯を手に取ると【痴女りたい】に電話をした。
先程の受付の男が電話に出る。
俺はホテル名と部屋番号を告げた。
『ホテルマハラジャに入ったでゲス。207号室によろしくでゲス。りょうちゃんがくれば嬉しいでゲス。』
それだけ言うと俺は電話を切った。
続く