ベッドから立ち上がった俺に、待ち構えていたさらに過酷な運命。
それほどの責を俺は追うのか?
自問。
否、そんなはずはない。
自答。
都合の良い自分への言い訳だった。
りょうの手は相変わらず休まる事は決してなかった。
取り付かれたように、優しく時に激しく。
舌を使い、手を使い、そして恐らくは腰をくねらせ全身を使い。
そして俺に背後から語りかける。
『自分でパンツを脱いで。ゆっくり下ろしてね。』
俺に何もかもを捨て去れとこの女は言う。
夜。
孤独。
それだけで俺は何もかもを失ったと思っていた。
経験が告げて教えてくれた。
しかしりょうは違った。
彼女だけは違ったのかも知れない。
俺自身も知りえない、隠された感情を見つけ出しては彼女は捨て去れと言う。
すでに俺は、依頼を受けてしまった事に後悔を感じ始めていた。
つくづく自分の性格が嫌になる。
人に借りを作らず、常に優位に。回収する側へ。
だが実際はどうだろうか?俺には分からない。
考えるのを諦める。
俺は自分の下着に手を掛けた。
その瞬間。ふと俺が振り返った、その時。
りょうはおもむろに自分の背へと手を回すと、上半身唯一の守り。
俺に立ち塞がる連なる火山を、溶岩を自らの手で取り去った。
そこには二峰の雪山が姿を現す。
露になる乳房。
たゆん、たゆん。
十八禁の卑猥な漫画であればこう表現される擬音。
ルージュのように赤い乳頭。
立っている。
彼女も、りょうも俺と同じだった。
程好い大きさで、赤ん坊に独占はさせられないほどにしゃぶりたくなる。
そして形の良い、大きな。
大きな胸。これが胸。これぞ胸。
これこそが女の胸。
夢の女を思い起こされる。
―ここでも俺は遅れを取るのか?―
俺は手にかけたCalvin Kleinを素早くずり下ろした。
足を使い、完全な俺へと。
りょうはそっと俺の前へ回り、IKEAのバスタオルより癒しをあたえるように俺を抱きしめる。
かと思うと離れる。
俺のミスタービーンズと自分のミスビーンズをお見合いさせる。
掴まれた二の腕から、りょうの手の温度が伝わる。
さようならの様にりょうは後ろを向く。
そしてホックを外してスカートを床に落とす。
そして尻を、尻を、尻を!
AでもないZでもない。
無論HではあるがHではない。
俺は確かに見た。
見間違える筈がない。
彼女はアルファベット部隊二十番目の刺客。
そう…。
Tバックを着用していた。
その極小布面積しかないブラジャーとお揃いの赤のTバックを履いていた。
尻ホッペが完全に露出されていた。無防備な尻ホッペを俺の、俺の、事もあろうか俺の生用心棒に押し付ける。
冷やりと、冷たい感触が股間に伝わる。
しっとりと濡れているかのように錯覚する。
いや、濡れているのは生用心棒の汗のせいだった。
今更だが、経験がそう告げていた。
続く。